僕は,4月末から5月上旬の時季が,1年で一番好きだ.水路には水が満々と流れ出し,田に水が引かれ,気が付けば,一面が区切られた多数の水鏡になる.寒くもなく,暑くもなく,清々しい.一年がいよいよ本格的に動き出していると感じる.花粉症の方には,こんなことを言って申し訳ありません.
この頃には,キジもどこからともなくやって来て,苦しそうな声で鳴く.たくさんいるカラスと同じくらいの大きさで,動きも似ているのでわかりにくい.しかし,羽をばたつかせてギャーギャーと鳴くのを聞くと,季節が変わってきたことを感じる.
この風景は,人工的なものだ.だが,同時に,自然に満ち溢れているようにも感じる.基本的に平らな土地なのに,大きな水路から中規模の水路へ水が流れ,さらにそれがうまくそれぞれの田に行き渡って真っ平らな水田が広がる.余った水は小川に流れ込み,水嵩を増して勢いよく流れていく.なんて,うまくできているのだろう.
この風景は,先人の技術者による,何千年も前から行われてきた土木技術だ.農耕も自然破壊だった.だが,何千年も前からこれが続いていることを考えると,自然と上手に歩調を合わせた技術だと感じる.太陽エネルギーで水を大気に持ち上げ,重力を利用して田に水を導き,太陽エネルギーで稲を育てる.連綿と受け継がれてきた先人の技術に敬意を抱く.現在,強引,傲慢,力ずくと感じる構造物が増えているように思う.そんな中,周りを水面に囲まれながら,人工物をつくる土木事業であっても,自然と共に進化していくような構造物を生み出す,そんな発想ができる土木技術者になりたいものだとあらためて思った.

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