1-001. 木材の活用と大気の二酸化炭素低減

樹木は,光合成により大気から二酸化炭素を吸収し,炭素を樹木として固定化し,酸素を大気に放出します.樹木は,大気の 二酸化炭素を吸い込み成長しているのです.このため,樹木が成長すれば成長した分,大気から二酸化炭素を削減させたことになります.
成長した樹木は.伐採して丸太を始めとした木材製品(HWP:Harvested Wood Products)となっても炭素を木材として固定したままです.伐採した土地に植林が行われ,再び樹木が成長すれば,その分新たに二酸化炭素を大気中から削減させたことになります.HWPと樹木の総量の増加は,大気から吸収され固定化した炭素量の増加なので,その分純粋に大気から二酸化炭素を減少させたことになります.樹木やHWPの総量を増やす施策が,大気中の二酸化炭素濃度を減らす有効な方法なのです
1-002. 脱炭素社会へ向けた木材活用の取り組み

はるか昔に,大気に大量にあった二酸化炭素は,植物,動物や海水などにより吸収固定化され,それらは地下へ埋設され続けられてきました.この地球の長い歴史により,大気は二酸化炭素濃度が減少し,その恩恵を受けて人類も誕生し現在にいたる進化を遂げたとも考えられます.しかし,その恩恵と逆行して,人類は地中に埋設された炭素を地下資源として極めて短期間に掘出し使用し,現在の深刻な気候変動を生じさせています.裏を返せば,この逆を進むことが,気候変動緩和策となるのです.
現在木材は建築材料や家具などに使われていますが,木材の軟弱地盤対策などへの地中活用は,木材を大量に,長期間,かつ,安定的に地中に設置することができるので,正に気候変動を生じさせた逆の方向へ進む,単純かつ確実な方法です.
かつての地球の自然な歴史を現在の事業に組み込むことで,植林⇒育林・成長⇒伐採・運搬⇒活用のサイクルを効率よく回すことが大切です.大気中の二酸化炭素を自然の力を活用し炭素を樹木として固定化し,その炭素が固定化された樹木を伐採しHWPとして地盤改良材として使用する.この過程において,大気からの二酸化炭素の回収固定は,基本的に新たな費用やエネルギーをほとんど必要とせず,また,地盤改良も既に建設事業として事業が成立していれば,ここでも新たな費用やエネルギーをほとんど必要としないので,気候変動緩和策を費用やエネルギーを掛けることなく,安定的かつ確実に直ちに実施できることになります.これにより,花粉症対策や森林の多面的機能の活性化も同時に生み出す波及効果も大きく,この全体的な効果は,計り知れないのです.
HWP:Harvested Wood Products
1-003. 木材で炭素を地中に貯蔵しても工事をすれば二酸化炭素を大量に排出するので効果がないのではないか?

例えば,丸太を地中に打設するには,建設工事用の重機を用います.このため,工事をすることにより二酸化炭素を排出します.しかしながら,工事に用いた木材に固定されている炭素量(二酸化炭素換算で)は,建設工事による排出量の十倍以上に大きいことが確認されてます.したがって,工事をすればするほど,二酸化炭素を排出するのではなく,大気から二酸化炭素を削減していくことになります.