はじめに
ベネチアやサンクトペテルブルグでは、基礎に木杭が使われ、今もなお構造物を支え続けているのを御存じでしょうか?国内でも、今も木杭で支えられている構造物があちこちにあります。木材は、軟弱地盤などに埋設すると、百年後も大きな劣化を生じることなく構造物を支え続けます。
私たちは、このような先人が残してくれた経験と知恵を現代に応用し、生きとし生けるものの進化に逆らったり、突出したりすることなく、共に進化することを考えています。その具体的な活動が、木材を積極的に材料として使うことです。中でも、構造物を造る時に課題となる地震による液状化や軟弱地盤の対策として、木材を活用することを推進しています。
地中での木材の使用は、地盤対策になるばかりか、炭素の地中貯蔵による気候変動緩和策、花粉症対策、森林の多面的機能の向上に貢献します。森林が、生物の進化に大きな役割を担っているのと同じに、森林から伐り出された木材を運搬し、使用し続けることで、地中に再び森をつくり、災害にも強い安全安心な自然と共進化する社会をつくるのです。
これは、国内に限らず海外でも適用できる考えです。自然災害を多く経験し、多くの知恵を持ち、また、現在森林資源が豊富で森林国家である日本が、蓄積した技術を国際的にも展開するときです。本協会は、国内外を問わず、健全な社会基盤の蓄積と気候変動緩和に貢献するとともに、次世代の育成にも力をつくしていきます。